傷病手当金って聞いたことあるけどどんな制度かあんまりわかってないな・・いざ病気になって仕事を休まないといけなくなったときどうすればいいんだろう・・そんな悩みをお持ちではないでしょうか?
実は、傷病手当金って結構手厚い制度なんです。
なぜならなんと最大で支給を開始してから通算して1年6か月貰える制度なんです。
今回は実際に仕事でも傷病手当金を扱い、社労士の資格を持っている私が解説していきます。
この記事では傷病手当金とはどういったものなのか?有給使ったときは?など皆さんが疑問を持っていそうな内容をピックアップして紹介していきます。
この記事を読んでいただけると傷病手当金の仕組みを知れて、実際に受給する場合に慌てずに行動することが出来ます。
傷病手当金の仕組みを知って何かあったときに落ち着いて対処できるように備えましょう!
傷病手当金とは?
被保険者が業務外の病気やケガによる療養の為に仕事に就くことが出来ず、給与を受けられないときに通算して1年6か月支給されます。
※任意継続被保険者(退職後も在職時に加入していた健康保険を最大2年間継続できる制度)については支給はありません。
傷病手当金もらえる5つの条件
- 健康保険の被保険者であること
- 業務外の病気やケガであること
- 病気やケガで仕事が出来ないこと
- 給与が出ないこと
- 連続して3日間休んでいること
健康保険の被保険者であること
これは一般的に社会保険に加入している会社員本人が対象になります。言い換えると社会保険に加入していないパートの方や個人事業主の方は対象ではありません。
業務上の病気やケガであること
これは業務上の病気やケガは労災保険から支給されます。職場での病気やケガは対象外ということです。
病気やケガで仕事が出来ないこと
本来の仕事が出来ないことを指します。うつ病である精神疾患も含まれますので無理せず仕事を休みましょう。
給与が出ないこと
この条件でみなさんに大きく関わるのは有給だと思います。有給は休んでいますが、給与が出ていることになるので併給はできません。
連続して3日間休んでいること
こちらは待機期間といわれるものです。この後詳しく解説します。
支給期間

全国健康保険協会
以前は支給開始から1年6か月経過してしまうと支給終了になっていましたが、現在は通算1年6か月になりました。そのため一度病状が回復して職場に復帰したが、同じ症状でまた休みになっても通算1年6か月に達するまでは傷病手当金は支給されます。
待機期間とは?

全国健康保険協会
休んでいる期間が連続して3日間になったときに待機期間は完成します。飛び飛びでは待機期間は完成しません。
次に待期期間ついて実務的な質問を交えて解説していきます。
Q.待期期間の計算はいつが起算日か
A.就労時間中か就労時間終了後かどちらに該当するかで起算日は変わります。
- 就労時間中その日が起算日に
- 就労時間終了後は翌日が起算日に
※2日間労務不能の状態が続いていたが、3日目に出勤して就労時間中に具合が悪くなって帰った場合はその日は労務不能と認められず待機は完成しません。
Q.有給は待機に含まれるか
A.含まれます。
待期期間の要件は労務不能であり、報酬の支払いがあったかは関係ありません。なので欠勤開始から有給を使って3日間休んでも待期期間は完成して、4日目から傷病手当金は支給されます。
なお、待期期間には土日、祝(公休日)も含まれます。
傷病手当金の支給額は?
ここまで読んで実際いくらもらえるのか気になっていると思います。支給額について紹介します。
1日当たりの金額:【支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額】(※)÷30日×(2/3)
傷病手当金 | こんな時に健保 | 全国健康保険協会
(支給開始日とは、一番最初に傷病手当金が支給された日のことです。)
こちらが支給額になります。傷病手当金は非課税ですが、この期間は社会保険料は免除されません。
※日当たりの金額で、本来の休日も支給されます。
支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額には残業代、交通費は含みますがボーナスは含みません。下図はイメージ図になります。

手取りは減ってしまいますが、生活が全くできないほどではないので体調がすぐれないときは傷病手当金を使って休むのは一つの手段として考えておきましょう!
社会保険に加入した直後でも支給されるのか?
ここまで読んでいただいた方の中には社会保険加入直後でも傷病手当金は支給されるのか?と思った方も多いのではないでしょうか。傷病手当金には以下の計算方法があります。
(※)支給開始日の以前の期間が12ヵ月に満たない場合は、次のいずれか低い額を使用して計算します。
ア 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
傷病手当金 | こんな時に健保 | 全国健康保険協会
イ 標準報酬月額の平均額
・30万円(※):支給開始日が令和7年3月31日以前の方
・32万円(※):支給開始日が令和7年4月1日以降の方
※当該年度の前年度9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額
この説明文にあるように12か月に満たない場合には通常とは違う方法で計算されます。裏を返せば傷病手当金は何か月以上加入などの条件はないので加入直後の病気やケガにも支給されます。
退職後には支給されるのか?
- 被保険者の資格喪失をした日の前日(退職日)までに継続して1年以上の被保険者期間 (任意継続被保険者、共済組合の組合員である被保険者又は国民健康保険に加入していた期間を除く)があること。
- 資格喪失時に傷病手当金を受けているか、または受ける条件を満たしていること。
(なお、退職日に出勤したときは、継続給付を受ける条件を満たさないために資格喪失後(退職日の翌日)以降の傷病手当金はお支払いできません。)
※資格喪失後老齢年金が受けられるとき
資格喪失後に傷病手当金の継続給付を受けている方が老齢厚生年金等の老齢退職年金の受給者になったときは、傷病手当金が支給されません。ただし、年金額の360分の1が傷病手当金の日額より低いときは、差額が支給されます。
全国健康保険協会
こちらの条件があるように退職後でも傷病手当金は受給できます。ただ継続して1年以上の被保険者期間が必要です。この継続してという言葉が非常に重要です。一年間の途中に国保の期間、任意継続被保険者の期間、共済組合の組合員である被保険者が含まれると対象じゃなくなってしまうということです。
傷病手当金と雇用保険の基本手当は同時に受給できるのか?
結論受給はできません。解説していきます。(今後雇用保険の基本手当については詳しく解説します)
雇用保険の受給条件に傷病手当金が受給できない理由が記載されています。雇用保険を受けられる失業状態とはここがポイントになります。
雇用保険の目的は被保険者が失業した場合に必要な給付を行うとあります。この雇用保険でにおける失業とは被保険者が労働の意思と能力があるにもかかわらず職業に就くことが出来ない状態をいいます。
この状態は傷病手当金の労務不能状態には該当しない為、受給できません。
傷病手当金との併給については、上の図にもある老齢厚生年金、出産手当金もあると思います。
この二つは基本傷病手当金より優先されて支給されます。ただし先程説明したように老齢厚生年金では年金額の360分の1が傷病手当金の日額より低いときは、差額が支給されます。
出産手当金でも同じような考えで傷病手当金の額が出産手当金の額より多ければその差額が支給されます。
通算1年6か月経過後はどうなるの!?
傷病手当金の通算1年6か月が経過しても症状が治らなかったどうなるの?と不安に思ったかたもいるのではないでしょうか。
そこで紹介したいのが障害年金です。こちらは初診日から1年6か月経った障害認定日以降に請求ができて、傷病手当金の支給後に障害年金と設計されています。
※初診日とはその症状で初めて医師の診察を受けた日(病気を発症した日や病名が確定した日ではない)
※障害認定日とは障害の程度の認定を行う日。請求する傷病の初診日から起算して1年6か月経過した日、またはその日までにその傷病が治癒した場合においてはその治った日「症状が固定し、治療の効果が期待できない状態に至った日を含む」となります。どちらか早い日になります。
障害年金につきましては後日紹介します。
最後に・・・
傷病手当金についてご理解いただけましたか?傷病手当金を正しく使えることが出来ればしっかり体調を治して職場に復帰出来たり、休んでいる間の収入の不安も抑えられると思います。
頑張って仕事に取り組むことは素晴らしいことですが、社会保険に加入し、今病気やケガで体調がすぐれない方は休んでも傷病手当金という制度があると知っておくだけでも心が軽くなるのではないでしょうか。
今後も社会保険、労働保険関連の制度も発信していきます!よろしくお願いいたします。今日もありがとうございました。
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