最近社会保険の加入条件が変わるといったネット記事を見て、自分の会社でも社会保険に加入しなきゃいけなくなるのか、そうなったら残業等を調整しないとダメなのかなと不安になっていませんか?
実はいわゆる短時間労働者の社会保険の加入条件は健康保険の被扶養者条件とは考え方が異なるんです。
なぜなら社会保険に加入する賃金の条件である月88,000円には残業代等は含まなかったり、就労時間に関しても雇い入れ時の条件で判断する等異なる点があるからです。
会社では人事担当として社会保険に携わり、社会保険労務士の資格も持っています。今後の改正に向けて対策も考えています。
今回の記事では、社会保険の加入条件を詳しく解説しつつ、自分の体験談、更に実務に沿った質問を交えて解説をしていきます。
この記事を読んでいただければ現在社会保険に加入していないけど、今後自分の会社でもどうなったら社会保険に加入なのかがわかります。
そもそも社会保険とは?
社会保険は広義と狭義があります!
- 社会保険(狭義)
- 労働保険
- 健康保険
- 厚生年金
- 介護保険
- 雇用保険
- 労災保険
この社会保険の詳しい説明は「日本の人事部」さんが詳しく説明してくれています
今回皆さんが加入しなきゃいけなくなるのかと不安に感じているのは狭義の意味である健康保険、厚生年金、介護保険が対象になります。
雇用保険、労災保険についても今後紹介していきます!
社会保険の加入する事業所とは?
まず社会保険に加入かどうかは、事業所単位で判断されます。事業所には強制適用事業所と任意定期用事業所があります。
- 法人である事業所(従業員1人以上)
- 個人である事業所で適用業種に該当している(常に従業員5人以上雇用していること)
※この従業員とは性別、雇用形態、国籍は問いません
この二つの条件のどちらかに該当した事業所は強制適用事業所となり社会保険に加入しないとなりません。
強制適用事業所に該当しない事業所になります。
ただ、一定の条件に該当すれば社会保険に加入できます。
任意適用事業所が社会保険に加入するためには、被保険者となる者の半数以上が加入に同意し、厚生労働大臣の認可を得る必要があります。さらに、必要書類を年金事務所に提出しなければいけません。
強制適用事業所のうち社会保険に加入しなきゃいけない人とは?
- 常時雇用される従業員
- 週の所定労働時間および月の勤務日数が常時使用される従業員の4分の3以上である者
以上この二つの条件のどちらかに該当する者は社会保険に加入になります。しかし、4分の3未満の方でも条件に該当すれば社会保険に加入になります。
この条件というのが短時間労働者を対象とした要件があり、パートの方々を悩ませている内容となります。
- 週の労働時間が20時間以上30時間未満である
- 所定内賃金が88,000円である
- 2か月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない
- 特定適用事業所である
一つずつ見ていきましょう!
契約上の所定労働時間であり、臨時の残業時間は含みません
契約上20時間未満であっても実労働時間が2か月連続で週20時間以上となり、それ以降も続く見込みの場合、3か月目から加入対象になります。
※フルタイムで働く従業員が週40時間で働く場合
労働時間は実態ベースで考えるということです。契約時間をわざと少なくして社会保険加入を回避することは不可ということですね。
こちらの対象は基本給と手当になり、以下金額は含めません。
- 残業代
- 通勤手当
- 賞与
- 臨時的な賃金
- 1か月を超えるごとに支払われる賃金(賞与)
- 時間外労働、休日労働、深夜労働に支払われる賃金(割増賃金)
- 最低賃金に含めないと決めたもの(精皆勤手当、通勤手当、家族手当)
こちらの88,000円の金額が世間で言われている106万の壁に繋がります。
88,000円×12か月=1,056,000円
このように年収ベースで106万円に到達してしまうと社会保険加入要件に該当してしまいます。なのでパートの皆さんはこの106万という金額を意識されている方が多いのだと思います。
自分の経験上にもこの金額を気にしているパートの方に「忙しくて残業が増えて超えてしまう月があるけど大丈夫ですか?」など聞かれるケースはあります。
このような質問の回答とすると上記にあるように時間外労働に支払われる賃金は含まないので「残業の割増賃金は含めないで判断します」という回答になります。
こちらは入社後すぐ退職された方や、1か月未満の就労の方などは対象外ということです。
休学中、通信制、定時制の方は対象になります。
特定適用事業所であること
こちらの特定適用事業所に該当するかしないかが大きな論点になっています。
2024年現在では従業員数が51人以上の企業が該当しています。
ここでいう従業員数とは務めている従業員の方全員を指すのではなく、厚生年金に加入している人が対象になります。
今後の短時間労働者に対する社会保険加入条件の変更について
今後先程説明した加入条件の要件である
- 所定内賃金が88,000円以上
- 特定適用事業所であることの51人以上
この2つの要件が撤廃される見込みです。
2025年5月16日、厚生労働省は「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」を国会に提出しました。
この法改正案には、社会保険の適用拡大や在職老齢年金制度の見直し、遺族年金の見直しなど、企業の雇用管理に大きく関わる内容が盛り込まれています。
特に注目されているのが、「社会保険の適用拡大」に関する改正です。
特定適用事業所の人数に関しては令和9(2027)年から10月から50人以下の企業でも社会保険加入が適用になる見込みです。ただし、一斉に全部の企業が対象になるのではなく段階的に引き下げられます。
- 令和9年10月~令和11年9月末:従業員35人を超える企業が対象
- 令和11年10月~令和14年9月末:従業員20人を超える企業が対象
- 令和14年10月~令和17年9月末:従業員10人を超える企業が対象
- 令和17年10月~:企業規模による要件は完全に廃止
この引き下げが実行されれば将来的にはどの企業の短時間労働者も社会保険の加入対象になります。
賃金要件関しては、廃止される見込みです。施行日は、改正法の公布から3年以内の政令で定める日とされています。理由とすると、最低賃金が全国的に1,016円以上になれば、週20時間勤務でも年収106万円を超えることになり、わざわざ分けた要件にする必要がなくなったためです。
さらに詳しい内容は「ビジネス成功ガイド」さんが解説してくれています。
実務に沿った質問例
Q.上記で紹介したように対象従業員数が減少し、社会保険加入条件に該当する企業に該当したとします。入社当時の見込みでは年収が月88,000未満で社会保険未加入のパートがいたとします。
業務量が忙しくなり残業代が多くなった場合年収を106万(月88,000円)以内に収めるように就労調整する必要があるのか?
(※賃金要件が撤廃されていない状況下の話になります)
A.結論とすると調整する必要はありません。なぜかといいますと社会保険に加入するかどうかは、年間実績ではなく雇入れ時に、契約内容で判断されるからです。
88,000円のところで説明したように「最低賃金法で賃金に参入しないものに相当するもの」を除いたものをいいます。「最低賃金法で賃金に参入しないものに相当するもの」には時間外の割増賃金も含まれるために88,000円超えるかどうかの判断に影響しません。
社会保険の関係では年収130万円(60歳以上の人等は180万円)『健康保険の被扶養者⦅国民年金の第3号被保険者⦆』がボーダーラインとされています。
ここでの年収とは賃金報酬のほか、不動産・事業収入等も含めた全収入を指します。賃金報酬には、所定内給与だけでなく、所定外給与(時間外割増等)や賞与も含まれます。
この年収130万を見るときには残業代も含めて考える為に自身での社会保険加入である月88,000円とは異なり健康保険の被扶養者から外れないために就労調整が行われます。
最後に…
今回は社会保険加入条件から今後の社会保険加入条件の変更の展望まで紹介していきました。現在短時間労働者として働いている方にとっては大きな変更だと思います。
今後現在の働き方のままでは社会保険に加入になるので働き方を変えたり今以上に就労時間を増やしたりと様々な変更が考えられます。就労時間の契約等については皆さんの会社との相談という形になると思います。
今後も社会保険含め法改正等ございましたら紹介していきますのでよろしくお願いします!
ここまで読んでいただきありがとうございました。
コメント